R.jフォーブスの著作『技術の歴史』によれば、人類が初めて出合った籠は、木の小枝で編まれた「籠」でした。ただし、人間が編んだ「籠」ではありません。鳥が編んだ「籠」、すなわち「鳥の巣」だったといわれているのです。
鳥には生まれながらにして「籠(巣)」を編む能力が備わっています。誰に教えられるでもなく、木々の小枝を集めて巣という器をつくり、ヒナを育てます。ヒトは親鳥の目を盗んでその「鳥の巣」を手に入れ、器として使う過程で、籠づくりの技術を学んだというのです。さらにヒトは、水を汲むために籠に粘土質の土を塗って用いるようになりました。やがて火を使う術を知ったヒトは、粘土を塗り込めた籠を火で焼けば、それは土器になることを知り、これが「陶器」のはじまりとなります。
また、ヒトによって考え出された「籠」を編む技術は、その編目から「織物」へと繋がり、「籠」を編む能力は、数学へと結びついていきます。こうして籠を編む技術がヒトの可能性を大いに高める手助けをしたとされています。
「鳥の巣」から「籠」へ、そして「土器」から「織物」へと続くR.jフォーブスによる技術の発展の歴史における仮説は、籠づくりが人類の発展に貢献したことを示唆しているといえるでしょう。